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「半島を出よ 上・下」村上龍/著。面白かった〜。上巻の半分までは、ホームレスの日常描写や、日本の経済崩壊、北○○の福岡侵攻、政府のグダグダ対応、(未来の)抵抗グループの日常が続いて、かなり読むのがキツかったのですが、未来の抵抗グループが抵抗することを考え初めてからは、一気に読めます。面白いです。後半、「この女なにしやがるーっっっ!!」と叫んでからは、もう電話が鳴ってもとらないし、夕飯も後にして!状態。でも、宣伝の割にはあんまり予約が伸びてないんだけどなぁ・・・・、やっぱり主婦層にウケる内容じゃないからかな。「魂萌え」の方が今すごい予約が伸びてます。
面白いのでオススメですが、やはり私の村上龍は大人が読む小説、という先入観はあながち間違いではなかった。この小説、「萌え」はありません。いや、勿論なくていいんですけど(笑) この作品を書いたのが福井晴敏なら、抵抗グループはもっと日本の国防に関して思う所があって、信念を持って抵抗して、ラストは希望の光があり、読者は萌え萌えだろうし、例えば高村薫だったなら、抵抗グループは地味な労働者で、社会構造に押しつぶされていても実は瞳に服従しきれない光を宿し、ラストはやるせない悲しみと感動で、読者は萌え萌えだろうし、例えば五條瑛なら、もっと米・中が裏で糸引いて大変で、抵抗グループはヘタレで、米軍は美形のドSで乙女は萌え萌えだったでしょう。で、今回はですね、章毎に視点が関係者の中で移っていくので、これといって一人に感情移入することがなく、全体が分かる構成になっているので、キャラ萌えはないですね。「屍鬼」がそーゆー作りじゃなかったかな。違ったかな。だからですね、作戦的にちょっとそれ現実的かなとか思う部分もありますが、きっとそーゆーことを云々する小説じゃないのです。
北○○軍が、あんだけの武器持っておいて、国内のエリートのくせして、そんなもんも知らないのか?!という驚きがいっぱい。キウイやマンゴーを知らなかったり、スニーカーを履いたことなかったり。本当にこんなに貧困なのなら、どうして国が成り立っていけてるんだろう・・・??てくらいすごい。 北○○軍の側からの章を読んでいると、ついつい感情移入してしまい、尚かつ、福岡を占領したといっても、市民感情を逆撫でて暴発させない様に、巧妙に市民を傷つけないようにふるまうので、なんか、そんな悪い人じゃないかも、なんてついつい思っちゃうんですよ、これが。でも、やっぱり暴力で強制してたら、例えどんな善行だったとしてもダメ。ラインハルトよりトリューニヒトを選ばないとダメなのよ!(思想と愛は別よ(笑) この本の中の政府はダメダメですが、まあ、実際こんなとこだろうという・・・・のも・・・、行政の末端で暮らしていると否定できない・・・。福岡市民を人質に取られて、テロリストを攻撃できるかな。てゆーか、するべき? しないべき? 放置すれば九州全体が恐怖統治に陥ると分かっていても。「民主主義で育った人間には、自分が傷つけられるのも、人が傷つけられるのも耐えられない」という文章が心に残ります。どうするべきか、迷うことの出来ることは素晴らしいことです。そんなすごい命題を突きつけておきながら、あのラストの展開は・・・・。あれは・・・どう考えたらいいんでしょう。つまり、政府や組織に頼るな、自分で考えろってことかな。第一、自分とこの政府をあれだけボロクソに書けることも、言論の自由って素晴らしい。(しかし・・・・この手の小説は今までほぼ100%日本政府は能なしなんですけど、余所の国の小説はどーなの? 韓国映画のスパイものって、あれは政府はどういう立場なの。ハリウッドは大抵パワーオブアメリカな印象ですが。日本は特別自己否定が強いのかしらそれとも普通なのかしら。)何はともあれ、皆、どこの国も、日頃から仲良くするのです。それしかないのだと、それだけは確実でした。 |
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